ESPr Developer 32 ( スイッチサイエンス製 ) を使ってみました

ESP32 ( ESP-WROOM-32 )

突入電圧、電圧ドロップ(降下)測定

電流測定はボードのパーツを剥がさないとできないので、今回は見送りました。
その代わり、5V ( Vout ) ピン電圧と、3.3V ピン電圧の変化をオシロスコープで見てみます。
電圧降下(ドロップ)を見れば、電流値をある程度予想できます。

ESP32-DevKitC と、ESPr Developer 32 で比較してみます。

まず、Arduino IDE に WiFi アクセスポイントへ接続するだけの簡単なスケッチを入力し、コンパイル書き込みしておきます。
そして、オシロスコープで VOUT ( 5V出力 )端子と 3.3V 出力端子の電圧を測ります。

まず、広いレンジ(範囲)の電圧を比べてみます。
以下のように、WiFi 起動までの時間はその都度変化がありますが、WiFi機能の起動によって明らかな電圧ドロップが発生していることが分かります。

[Graph-1]

[Graph-2]

ここで、気を付けて見ていただきたいのは、VOUT ( 5V ) 端子電圧です。
両者とも 4.7V 付近になっていますね。

これは、外部電源を入力した時の逆流防止ダイオードがVBUS ( 5V )ラインに入っている為による電圧降下が原因です。
ダイオードに通電すると 0.3V くらい降下しますので、外部入力端子がある以上、これは仕方無いですね。
では、電源投入時の突入電圧波形を拡大して見てみると下図のようになります。
ESP32-DevKitC の場合はこうなります。

[Graph-3]

ほぼ垂直に立ち上がっていることから、かなりの突入電流が発生していると考えられますが、意外にもその直後の電圧ドロップが殆ど無く、全く問題無い立ち上がりと言えそうです。
この波形をもっと詳細なレンジで測定しましたが、特に問題ありませんでした。
電流の大きさはどうか分かりませんが、起動した直後に大きな電圧ドロップは発生しておらず、デバイス側IC に悪影響を与えていないようです。
さすが、本家 ESPRESSIF社のボードです。

では、スイッチサイエンス社の ESPr Developer 32 の波形を見てみます。

[Graph-4]

パワーディストリビューションスイッチによるソフトスタートが効いていることが分かりますね。
ESP32-DevKitC に比べて、かなり滑らかな立ち上がりです。
途中の電圧ドロップも無いので、突入電流が抑えられていると予想できます。

次にWi-Fi 機能が起動したと思われる波形を見てみます。

[Graph-5]

[Graph-6]

5Vラインの電圧波形が、ESPr Developer 32 の方がクッキリ出ていますね。
ESP32-DevKitC は電圧が小さく、波形がナマッているように見えます。
これは、5Vラインの電流が ESPr Developer 32 の方が大きいことを意味しています。
恐らく、この時に電流が400mA ~ 600mA 流れているものと思われます。
ただ、電圧ドロップはおよそ330mV 以内に抑えられているので USB2.0 規格には問題無いと思われます。

それよりも、両者とも素晴らしいのは、3.3V 電圧が殆どドロップしていないことです。
ESP32-DevKitC の LDO レギュレーター NCP1117 はもっとドロップしてもいいはずなのに、これはちょっと驚きですね。
ただ、この場合はボードに他のデバイスを一切接続していない状態ということを頭に入れておいて下さい。

では、これにSPI 通信の 有機EL ( OLED )ディスプレイと、SPIモードの micro SDHC カードスロットを接続して、測定してみます。
するとちょっと状況が変わって来ます。

フルカラー OLED ディスプレイは 秋月電子通商さんで販売している Pmod OLED ( SSD1331 )を使って、下図の様に配線します。
因みに下図では ESP32-DevKitC の場合です。

 

ESPr Developer 32 で接続した写真ではこんな感じです。

では、電源投入時の突入電圧波形を見てみます。

[Graph-7]

[Graph-8]

いかがでしょうか。
ここでようやく違いがハッキリしてきました。
電源投入後に 5V 端子電圧がドロップしているのは、おそらく、OLED ディスプレイボードや、micro SDHC ボードに電流が吸取られていることによるものと思われます。

この電圧降下から数百mA 以上の電流が流れているものと思われます。
さすがに ESP32-DevKitC の LDO NCP1117 では電圧を一定に保つことができなくドロップしています。
それでも許容範囲ではありますが・・・。

驚きは、ESPr Developer 32 の 3.3V ラインがフラットというところです。
ここで、 LDO の性能の差が出てきましたね。

では、Wi-Fi機能が起動したと思われる電圧ドロップ波形を見てみます。

[Graph-9]

[Graph-10]

両者とも問題ないのですが、ESP32-DevKitC の方が 3.3V ラインで少々のドロップがありますね。
沢山のコンデンサを積んでいる割には、あまり効果を発揮していません。

3.3V ラインの電圧降下は2.5V を下回ってしまうと、ESP32 の故障リスクがかなり高まってしまいますので、この程度のデバイス追加であまりドロップしてもらいたくないところですね。

それに比べて、ESPr Developer 32 何もなかったかのように素晴らしくフラットです。
もし、もっと多くのデバイスが 3.3V ラインに接続されてしまったら、もっと顕著に違いが表れてくると思われます。
先ほども述べたように、3.3Vラインが2.2V~2.8V付近までドロップしてしまうと、ESP-WROOM-32 の許容電圧を下回り、フラッシュメモリを破壊することが考えられます。
以前も紹介しましたが、「ねむいさん」の以下の記事も合わせてご参照ください。

ESP-WROOM-32を使ってみる5 -ESP-WROOM-32が物故割れた!

ここで注意!!

VOUT ( 5V )端子に 5Vデバイスを接続するときは十分注意してください。
平均4.7V 出力ということに加えて、電圧ドロップが頻繁に発生していることをよく頭にいれておくことが必要です。
そうすると、5Vデバイスを接続する前段には、新たな LDO レギュレーターを入れた方が良いと思われます。
大容量コンデンサを入れることはUSB規格をオーバーしますので、USB電源を使う場合はお薦めできません。
これは、ESPr Developer 32 に限らず、ESP32-DevKitC も同様です。

まとめ

以上、最近発売されたばかりの、ESPr Developer 32 ( スイッチサイエンス社製) をレビューしてみましたが、まとめるとこんな感じです。

【短所】
●ESP32-DevKitC と比べて、サイズが長く、ブレッドボードを占有してしまう。
●ピンヘッダのハンダ付けランドが狭く、ハンダ付けが難しい。

【長所】
●他のボードと比べて、3.3Vラインの瞬時電圧ドロップ(降下)が少ない。
●パワーディストリビューションスイッチによるソフトスタート機能により、VBUS ( 5V )ラインの突入電流が抑えられ、パソコンやACアダプターのUSB ポートに優しい。
●出力側短絡保護、サーマルシャットダウン、電流制限等の保護機能が充実している。
●USBシリアル変換チップに FTDI社製の物を用いているため、 ESP32-DevKitC よりも高速でスケッチ書き込みができる。
ただし、パソコンのUSBポート構成により、FLASH ( BOOT )ボタンを押したままにする必要があり。
●長押ししても、それほど痛くならないボタンスイッチ。
●シリアル送受信 LED インジケーターが付いていて、意外と便利

あとは、スイッチサイエンスさんという信頼ある日本の販売店なので、パーツの出所も辿りやすいですし、安心感があるというのが大きいですね。

以上ですが、私はアマチュアですから誤ったことを書いているかも知れませんので、もし何かありましたらコメント等でご連絡ください。

しかし、今回は改めて感じたのですが、こういう開発ボードを商品化するというのはとても大変な知識と労力が要るものだとつくづく思いました。
開発者の方々の苦労をお察しします。

ということで今回はここまでです。

ではまた・・・。

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