ESP-WROOM-32 ( ESP32 ) の保護機能付き電源強化対策の実験

ESP32 ( ESP-WROOM-32 )

USBパワースイッチ LM3525 モジュール自作

素早い立ち上がりの1次突入電流と、2次突入電流を押さえる方法はいろいろ考えました。
例えば、サーミスタを使ってみるとか、前回記事のように電流制限抵抗を使ってみるとか・・・。
また、DC-DCコンバータも使ってみました。

結局、一番効果的だったのは、ESRの大きい電解コンデンサとUSBパワースイッチとLDOの組み合わせでした。

パワースイッチは以下の物を選びました。

LM3525M-L/NOPB (テキサスインストルメンツ)

これはRSコンポーネンツさんで購入しました。

ハイサイド(5V側)タイプとローサイドタイプがありますが、使いやすそうなローサイドタイプを選んでみました。

これは、主にUSBホスト側ポートやUSBルートハブポートに使う電流制限スイッチですが、突入電流制限素子としても使えるものです。
しかも過電流保護付きという優れものチップです。
1チップ219円とちょっと高価ですので、ハイサイドタイプの方が少し安いです。
そして、出力側の突入電流を抑制するためのソフトスタート機能があります。
ソフトスタートとは、電圧を上げる時間をゆっくりにして、コンデンサ充電の突発電流量を抑える機能のことです。

また、これの良いところは、何といっても日本語データシートがあることです。

http://www.tij.co.jp/product/jp/LM3525/technicaldocuments

これを使うと、LDO電圧レギュレーターの前にUSBハブを介しているような感じになります。
LDOに保護装置が付いていないものを使う場合には、とても有効なチップだと思います。
そして、ノートブックPC電源を保護する公称1Aのショート時出力電流という機能があり、USBホスト側も保護できるという優れものです。

これはUSB2.0規格用のもので、それ以上の電流を消費するデバイスでは使えません。

え?・・・なんで・・・と思いますよねぇ・・・。

今まで私は、ESP-WROOM-32の電源は USB3.0 以上の大電流対応のポートを使うべきだと言っていたのに・・・。

実は、いろいろ実験を重ねて ESP-WROOM-32 ( ESP-32 ) について分かってきたことは、単体使用でWi-Fi通信でLED10個程度を同時に点灯させるくらいならば、USB2.0で十分だという結論に至ったからです。
SDカードやディスプレイを接続したら分かりませんが・・・。
詳細な理由は後述します。

では、揃えるパーツは以下の通り、最小構成としました。

SOP DIP変換基盤は手持ちで有り物を使用しました。
こんなにピン数は不要なので、別の基板があればそちらの方が良いと思います。

接続方法はこんな感じです。
データシートのInrush Current-limit Applicationを参考にしました。

LM3525-Lの場合は、ENピンをLOWレベルにするとLM3525が起動し、HIGHにするとOFFになります。
ENピンにスライドスイッチなどを設けても良いと思いますが、チャタリングの問題があるので、基本的にはUSBコントローラー等のマイコンでON-OFFするようです。
今回は主に突入電流対策だけなので、予めENピンはON状態にするためにGNDに接続しておきます。

FLAG端子は過電流トリップした場合の警告信号出力用です。
これは今回使いませんので、無接続とします。

では、パワースイッチモジュールを自作していきます。

まず、変換基盤のGNDパターン上のレジスト膜をマイナス精密ドライバー等で必要なところを剥いでいきます。

こんな感じにします。

次に、LM3525の方向に注意して以下のようにハンダ付けします。

次に、0.1μFチップセラミックコンデンサをOUT端子に下図の様にハンダ付けします。
NCピンは何も接続しなくて良いのですが、GNDに接続するとハンダ付けしやすいです。

次に、すずメッキ線をGNDパターンとGNDピンにそれぞれハンダ付けします。
そして、INピンに0.1μFチップセラミックコンデンサの片側だけハンダ付けして、反対側は銅箔パターンの無いレジスト上に載せておきます。

次に、2.54mmピッチL型ピンヘッダを下図の様にハンダ付けし、すずメッキ線で0.1μFとGNDピンをハンダ付けします。

最後にOUTピンをすずメッキ線でジャンプしてハンダ付けすればOKです。
ハンダ付けヘタクソでスイマセン・・・。

以上、パワースイッチモジュールの自作方法でした。

パワースイッチLM3525入り回路の電流測定

LDOは先ほどのADP3338を使って、ブレッドボード上で下図の様に接続します。

ここで、まず、VBUSラインの10uF電解コンデンサ(実測8.9μF)を外した測定結果は以下の通りになりました。
(以下、コンデンサは必ず放電させてから測定しています)

オーバーシュートが激しいですね。
LM3525の絶対定格の6Vギリギリです。
これを超えたら故障します。
やはり、パワースイッチの突入電流制限機能の意味は、LM3525起動後の出力側のソフトスタートによるものと解釈した方が良いようです。
つまり、デバイス側の突入電流制限ということです。
入力側のコンデンサ充電の突発電流には対応できないようです。
本来、USBホスト側の突入電流はホスト側で制限すべきものですね。

ということで、結局、ESR 2.17Ωの電解コンデンサを上図のように接続しなければならないようです。
そして、測定結果は以下の通りになりました。

ん~・・・。
これでもオーバーシュートが出ています。
でも、波形が緩やかで、電圧も押さえられています。
LM3525の入力絶対定格が6.0Vなので、もう諦めてこれでヨシとします。
第1次突入電流も1A以下に抑えられていて、50μC制限もクリアーしていますしね。

第2次突入電流はLM3525のソフトスタートが効いていて、緩やかな立ち上がりになっています。
結果、電圧降下も抑えられています。
電流ピークが1Aを超えていて、電荷面積も50μCをオーバーしているように見えますが、ブレッドボード上測定の誤差と考え、データシートにあるようにPCを保護する公称1A電流に抑えていると判断して、私的には勝手にヨシとしてしまいます。
LDOの3.3V側コンデンサを大きくしてしまうと、突入電流一山の電荷面積がたちまち50μCを超えてしまうので、USB2.0規格に従うとするとこれが限界っぽいです。

いろいろコンデンサを変えて実験してみましたが、入力側のオーバーシュートはどうしても出てしまいました。
ただ、ESRの大きなこの電解コンデンサを使った方が、一番オーバーシュートが少なく突入電流も小さかったので、今のところこれが私の知識上では最善かなと思っています。

いずれにしても、何も対策しない場合の4A近い瞬時突入電流や6V付近までオーバーシュートすることに比べれば遙かに良い結果です。

パソコンのUSBポート側でソフトスタート機能があれば、こんな突入電流にならないと思うので、勝手に私のPCのUSBポートが悪いと判断したいと思います。

では、下図の様にパワースイッチLM3525のアウト側ポイント②で電流を測定してみます。

測定結果はこうなりました。

さすが、ソフトスタートが効いていて、1次突入電流は無視できるほど大幅クリアーしています。
しかし、2次突入電流による電圧ドロップがちょっと気になりますね。
LDO ADP3338の動作範囲2.7Vを超えた後すぐそれ以下にドロップしています。
前回の記事の電流制限抵抗を使った時よりもドロップ度合いは抑えられていますが、あまり良くないですね。

実は、ADP3338の前段にESR=2.0Ω 10μF電解コンデンサを入れたり、10μF積層セラミックコンデンサを入れたりしてみましたが、特性が更に悪くなっていしまいました。
ADP3338のデータシートによると、入力ラインの距離が長い場合以外は、入力バイパスコンデンサは必ずしも必要では無いと書いてあるので、ここは0.1μF積層セラミックコンデンサでも良かったかもしれません。
ということで、ここはコンデンサ容量を少なくすれば解決するだろうと予想して私的にはヨシとします。

では、ADP3338のアウト側の3.3Vラインはどうなっているのでしょうか。
測定結果は以下のようになりました。

いかがでしょうか。
スバラシイですね。

何も対策していないと、3.3Vラインの突入電流も2A越えしていたのが、LM3525のソフトスタートによって劇的に抑えられました。
これは、LDO ADP3338 の出力コンデンサを2μFに減らしたこともありますが、いずれにしてもピークは劇的に減りました。

ただ、反面、ESP-WROOM-32 ( ESP32 )の動作に必要な電流まで抑えられてしまっては元も子もありません。

では、リセット動作時のESP-WROOM-32 ( ESP32 )が吸い込む純粋な電流測定結果を見てみます。
前々回の記事にあるように、ローサイド(GND側)で測定しました。

波形も鈍っていなくて、600mA付近という電流もしっかり吸い込むことが出来ているようです。

LM3525のデータシートによると、USB2.0ハイパワーモードでは、最低500mA の電流を常時流せるように補償しています。
最大1Aまでです。
ということは、USB2.0規格というものは絶対定格が500mAというわけではないようです。

では、Wi-Fi待機時のパルス電流をローサイド測定で見てみましょう。

プローブの校正が甘い! と突っ込まれそうな波形になっていますが、ちゃんと校正しましたよ。
パルスはキッチリ立ち上がっていて鈍りもありませんので、LM3525からはしっかり電流が供給されているようですね。
全く問題無しです。

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