ESP-WROOM-32 (ESP32) の 電流 測定 その2

ESP32 ( ESP-WROOM-32 )

5V(Vbus)ラインのUSBケーブルやUSBポートによる突入電流の違い

まず、前回の記事のように、ACアダプター、USB1.5mケーブル、USBテスター、USB0.9mケーブルを接続した場合の波形を改めて見てみます。
前項の波形のように、2つの山があったので、まず、第1次突入電圧波形です。

次は第2次突入電圧波形です。

第1次と第2次では約50msの間隔があります。
LDO ADP3338を使った場合の3.3Vラインも同じ間隔で2つの山があります。
この50msという間隔がESP-WROOM-32 自体に悪影響があるかどうかは分かりません。
でも、最悪の場合、1度起動してすぐ電源瞬断しているとも考えられます。
やっぱりこれは押さえたいところですね。

では、1A出力のACアダプターと0.9mUSBケーブルの場合の突入電流を拡大するとこうなります。

なんと、山が1つになったように見えただけで、拡大すると2A越えの山が2つもありました。
約70us間隔です。
と、いうことは、中国製USBテスターは突入電流を抑制してくれていたということでしょうか。

先にも述べたように、USBケーブルが長く、質が悪くなると抵抗値やインピーダンスが大きくなるので、突入電流を抑制します。
では、1.5mUSBケーブルをジョイントした場合はこうなりました。

突入電流は1A近くも減少しました。
これはオームの法則によれば、当たり前のことですね。

波形データは無いのですが、中国製USBテスターと0.9mUSBケーブルの場合は1.9Aという突入電流でした。
ということは、USBケーブルが長いとこれだけ電流抑制が働いてしまうわけです。

ならば、突入電流抑制はUSBケーブルを長くすればいい・・・と、いうわけにはいきません。
先ほど述べたように、電圧ドロップが大きく、ESP-WROOM-32の誤動作に繋がりますので、止めた方が良いですね。

では、PCのUSB2.0ポートに挿すとどうなるのでしょうか。
これは、パソコンの個体差があるのですが、私の手持ちのノートPCではこうなります。
因みに、USBケーブルは0.9mを使用してます。

なんと、第1次突入差動電圧が欄外まで振り切れ、3Aを超えてしまいました。
これはちょっとあまりにも大きすぎますね。
USBポートの素子は大丈夫なのでしょうか・・・?

では、PCのUSB3.0ポートではこうなります。

やはり、第1次突入電流が3A越えで振り切れています。
波形はUSB2.0ポートとほぼ同じで、電流値もほぼ同じ程度と言えますね。
ということは、パソコン内部では、コンデンサ等の構成部品がUSB2.0と3.0ではほぼ同じ容量のものを使っているような気がします。

規格では、USB2.0ポートの最大電流は500mA、USB3.0ポートは900mA ですが、もう何十回とUSBケーブルを抜き差ししています。
でも、今のところUSBポートは破壊されていないようです。
しかし、この突入電流はできる限り抑制したいところですね。

5VラインのコンデンサはPC側は調べていないので分かりませんが、LDO入力では10uFチップセラミックコンデンサがあります。
その他、ADP3338内部のコンデンサがあると思われます。
逆起電力を生むチップインダクタが瞬時電圧降下を押さえているところもありますが、話が難しくなるので、ここでは主にコンデンサに充電する電流について私なりに勝手に想像してみます。
間違えていたらスイマセン。

2つの電流の山の1段目は恐らく容量の小さなコンデンサに充電する電流かと思われます。例えばマイコンを高周波ノイズから保護するバイパスコンデンサなどが考えられます。
次の2段目の山は外付けの10uFのコンデンサに充電している電流かと思われます。

小容量コンデンサが満充電になった時点で5Vになりますが、そこではまだ外付け10uFの充電は途中なので、その電流で電圧降下が起きていると思われます。
そして、2つ目の山は幅が大きな山になっていて、5Vまで充電出来たら電流が下がると思われます。

では、この突入電流がデバイスに与える影響を考えてみたいと思います。

突入電流による影響を考える

では、突入電流は無視して良いのか、またはこれは抑制しなければいけないのか、素人の私なりに考えてみたいと思います。

突入電流がコンデンサに充電するためだけの電流ならば、その電流経路がケーブルや基板パターンの場合だけに限り、特に問題無いと考えられます。
当然、その電流に耐えうるケーブルの太さや、基板パターンがあることが前提です。
下図の様に5Vの突入電流ラインにパーツが無ければ特に問題無いと思われます。

これでも、その電流経路が極端に細かったり、クネクネ曲がっていたりすると抵抗値が大きくなって悪影響が出ます。

もし、その経路に電子パーツが接続されているならば、そのパーツの許容電流を考えなければならないと思います。
実は、私の自作したLDOボードでは、以下のようにフェライトビーズチップインダクタがありました。

ムラタ製チップインダクタ BLM21PG3331SN  は最大定格電流が1.5Aでした。
1.5Aもあれば、問題ないだろうと踏んで購入したんですけどねぇ・・・。
と、いうことは・・・。
3A越えの突入電流で破損してしまう可能性があります。
もう何十回も突入電流を流してしまいました・・・。

チップインダクタは無くても良いのですが、電源からのスパイクノイズやコモンモードノイズを除去するのに有効なので、やっぱりこれは使いたい。
とすると、耐電流の大きなチップインダクタを使うか、または突入電流を抑制した方が良いということになりますね。
それに、USBポート出力段にもどんなパーツが接続されているか分かりませんからね。

また、電圧安定のために大容量のコンデンサを置きたい場合があると思います。
でも、充電電流が流れる時間が長くなってしまうだけで、逆に悪影響を及ぼす可能性があります。
ですから、むやみに電源電圧のコンデンサ容量を大きくすれば良いというものではないということを頭に入れておかねばなりませんね。
(以上、素人なりに考えた突入電流についてですが、実は後でこの想像と異なる結果で出てしまい愕然↓↓↓)

ESP-WROOM-32電流測定ブレッドボード上の回路見直し(その2)
GNDライン強化

では、コンデンサ充電電流を極力排除して、ESP-WROOM-32 だけが吸い込む電流値を測定することにチャレンジしてみます。
これは、前回記事コメント欄macsbugさんからのアドバイスによるものです。
といっても、あくまでブレッドボード上なので、ベタグランドも無いですし、プチ強化というか、あまり効果が無いかもしれません。
でも、これでどれだけ変わるかを見てみたいというのもありました。
ということで、macsbugさんの言うように、ESP-WROOM-32の裏側のGNDパターンから引き出して、GNDに接続してみます。

以下の配線図を見てください。

ESP-WROOM-32 の裏面の金色の放熱パターンを実際にテスターでチェックしたところ、やはりGNDでした。

ということで、ここに4回線ハンダ付けしてみました。
その他のGND端子も全部接続してみました。
LEDもESP-WROOM-32から出ている電流なので、共通のGNDに接続します。
最初に紹介しましたが、macsbugさんの以下の記事では、海外販売のとても良さげな基板に穴を開けて、それにハンダ付けされていますので参照してみてください。

ESP-WROOM-32 and ESP32 Adapter Board

このアダプターボードはAliexpress でしか販売されていないようですが、現時点で私が今まで見た中では最強のアダプターボードと思っています。
なにしろ、ベタグランドや電源パターンが広く取られているというところが良いですね。
これに穴を開けてハンダ付けするやり方はよく考えたなぁ・・・と感心しました。

残念ながら私はこのボードを持っておりませんので、ブレッドボード上で頑張ってみます。

まず、丸ピンヘッダを4つカットします。
そして、下図の様にラジオペンチで先端をL字型に折り曲げます。

次に、下図の様な銅箔テープを用意します。

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これを放熱パターンのサイズに合わせて切り取ります。
そして、下図の様にハンダ付けしておきます。

そして、これをESP-WROOM-32 の放熱GNDパターンにハンダ付けします。

これの注意点は、ESP-WROOM-32のGNDパターンに長く熱を当てすぎない事です。

実は、私はこのピンヘッダを直接GNDにハンダ付けしたときに、熱を当てすぎて2度とESP-WROOM-32が動かなくなってしまいました。
700円がパーです。
コテを長く当てすぎると、内部のパーツのハンダも溶けてしまいますので、できるだけ素早く終わらせてください。
ハンダの量が多い為、熱量があります。十分気を付けてください。

では、ブレッドボード上で接続すると、こんな感じになります。

電流測定で、ESP-WROOM-32側とコンデンサ側と分けるために、ブレッドボードを2枚連結しています。
このサンハヤト製ブレッドボードは簡単に連結もできてとても使いやすいですね。

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しかし、ここまでやるんだったら、専用のボードを買った方が早いですね。
あくまで、ブレッドボード上でやるための苦し紛れの方法ですのでご容赦ください。

結局のところ、USBシリアルのGND端子に接続するところがボトルネックになってしまい、GNDライン強化にはなっていないかもしれません。
ただ、前回の記事のような、貧弱なGNDピン1回線からだけ取るよりは大分マシになったと思います。

コメント

  1. 匿名 より:

    > ESP-WROOM-32のリセット電流は約600mA
    > ということは、やはりUSB2.0 ポートは使うべからず

    USBの5VをESPが直に使ってる訳ではないため、そうはならないです。
    3.3Vで600mAを使った時に5V側も600mA消費してるのであれば、
    それは変換効率に難ありですw

    電圧のドロップに関しても、3.3Vへ正しく変換できる下限までのドロップは許容されます。
    5Vの精度がクリティカルになる場合、それはデバイス側の設計がおかしいですw

    • mgo-tec mgo-tec より:

      匿名さん

      記事をご覧いただき、ありがとうございます。

      この記事は随分昔(2017年)に書いていて、初心者の趣味レベル好奇心で書いた記事です。
      今でも自分自身よくわかっていませんが、当時はもっと分かっていなかったと思います。
      熟練者の方々からコメント投稿をいただければ、後で気付くことが多くとても助かります。
      ありがとうございました。

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